Annex of Theatrum Mundi

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感想・戦闘妖精・雪風<改> & グッドラック-戦闘妖精・雪風

東浩紀先生の波状言論での神林長平インタビューとOVA版1・2巻を先に観てから読んだので大分偏った感想かも。
前者では機械と人間とジャムという立場が対置され、ある種80年代の危機感と期待感を反映していると思われる。それが後者になるともう少しこなれてきて、機械と人間の調和というか共存関係を描くことが主眼となっていると感じた。その顕著な例として深井零が雪風に抱く感情はグッドラックの最後で愛であるとエディス・フォス大尉に言われている。この表現がどのくらいの読者にすんなりと受け入れられているのかはデータがないのでわからないけど、少なくとも私には非常によく理解できる。私の考えでは道具を用いることによって可能になることはすなわち人間の能力の拡張そのものであり、その道具は人体の一部である。小説内では「機械生命体」などと呼称されているように擬人化というか人格化(?)が行われているが、ほぼ同じ事を言っていると思われる。
また機械と人間に関する立場(というかSF考証?)は先に少し触れたように時代性を色濃く反映している。その立場を他の作品(私が最近読んだもの)との比較で図式化してみると、「雪風」→「ガンスリンガーガール」→「攻殻機動隊」の順に機械と人間との差異が明確でなくなっていく。そういう意味では雪風は楽観的な世界観に基づいているといえなくもないが、どれもテーマとしては「人間とは何か」という問いそのものであるように見える。
最後に私の周囲やネットで見た(自分に都合の良いデータだけだが)評価ではOVAは原作ファンから不評を買っているようだが、私はかなりよくできていると思う。確かにGONZOのCGはいかにもCG臭いし、ドッグファイトの動きももっさりしている気はする。ただ、上述したテーマに関しては忠実に描かれている。そもそも空戦をリアルに描いても航空機の操縦を体験したことのない私にはそれが現実と同じなのかを評価することはできない。アニメーションのキモは如何にリアルっぽく見せるかなので、その点でのクオリティは満たしていると思われる。
結論としては、とりあえず面白いので読んでみて下さい、ということで終了。