Annex of Theatrum Mundi

絶賛更新停滞中のはてダに加えて停滞するblog的な何か

感想・機動戦士Zガンダム星を継ぐ者

Zガンダム放送20周年記念作品。3部作の第1部なので途中まで。錦糸町なんて中途半端な映画館で本日2回目にも拘らず立ち見がいたのは驚き。以降の感想はネタバレありなので内容が気になる方は読まないことをお勧め。

オープニングがいきなり始まってGacktの歌声が聞こえてきたんだけど、CGを使っているにもかかわらず奥行きがまったくない4重スクロールだったので心の中で失笑。全体的に映像を見て感じたのは、昔のセルと書き直したセルとCGがはっきり分かれすぎ。女性キャラとか見分けが困難なくらい。ストーリー自身はTV版1話から14話までのダイジェストだった(一部割愛)。具体的に言うとアムロがシャア(クワトロ)と会ってエウーゴに合流するところまで。スタッフロールのあとにZガンダムⅡの予告が出るんだけど、サブタイトルが「恋人たち」で、想像するにフォウが死ぬところまでなのかしらん。そうするとⅡが一番濃いというか話が詰め込まれる感じになりそう。そしてⅢで全員壊れていくさまをこれでもか、と見せ付けるという流れになるわけだ(w。今回もシロッコが何回か出てきて、木星帰りのデムパをゆんゆん発信してたが。あとライラとカクリコンが数分しか画面に登場していないのが哀れだったかも。

最後に本作の位置付けについて考察。TVで放映されたアニメ作品のリメイクということで「新世紀エヴァンゲリオン(以下エヴァ)」、3部作ということで「スターウォーズ(以下SW)」と「ロードオブザリング(以下LOTR)」と比較してみる。
はじめに結論を言えば、本作はこれらの作品と比肩するだけの強度を持っていない、もしくは持つことが出来ないと思われる。
まず前者に関していうと、エヴァのヒットはある意味「新しいものを知ろうとする」興味によって成り立っていた部分が多い。TV版の視聴率はZガンダムに比べて高い(平均7.1%、Zは6.4%)ものの、人気が沸騰したのは放送終了後である。放送時には不完全だったラストが謎として興味を誘い、何回かの再放送を経て完全版が公開される、ということで劇場に足を運んだ方が多いと思われる。そこでアレをかましてしまったので、その後の市場は縮小したが。翻って本作は「新訳」と銘打っているとおり、基本的にはTV版の焼き直しであり、新たな展開や残された謎を解明する、というようなものではないと考えられる。そういう点でエヴァに比べると、インパクトにおいて劣るのは否めない。また社会的な熱狂具合を考慮しても、エヴァはそれこそ沸騰に近い盛り上がり(メディアでの取り上げられ方を含めて)であったのに対し、Zガンダムは近年のガンダムに関する知識の普遍化によって局所的な熱はそれほど高くない。この社会状況を物理のアナロジーで言えば、エヴァのスターバーストに対しZガンダムは背景放射であるとみなせると思われる。このように、本作は
後者のSWとLOTRと共通する点として、すべての作品が先行する作品を持つ。本作はTV版、SWとLOTRは小説版が先行する。したがってここで参照するすべての作品について、ストーリーを事前に知ることが可能であり、その点での新規性はないことになる。またすべての作品で同じ監督が製作していることも共通点としてあげておこう。この点では同一の条件下にあるといえる。ここで対立点として挙げられるのは、SWとLOTRは作品世界が先行して存在し、それに基づいて映像化がなされているのに対し、本作は後に発売される関連商品を売ることが第一目標で製作されている。この点は作品そのものを楽しむ場合にはあまり影響力を持たないと考えられるが、作品の収まる枠をある一定の範囲内に押し込めてしまう恐れがあり、好ましいとは言えない。ぶっちゃけて言ってしまえば、スポンサーの意向、すなわち商品戦略に沿った作品になるわけで、それはむしろ商品そのものとなってしまう。それが作品の良し悪しを決める要素とはならないが、少なくとも製作者(この場合は監督)の作家性を制約する可能性があることは間違いないだろう。私のようなひねくれた人間には、そのような商品化された作品は気に食わない、というような反応を生み出すことになる。
以上2点について考察した結果、本作Zガンダムは先行する作品に比べて不利な点があり、興行的にも歴史としての強度も先行する作品に劣る可能性が高い、と考えられる。実際には広く知られるようになったガンダムの映画ということで興行収入としては十分以上ペイすると思われる。しかし、作品の強度は決して強くないため、ガンダムの歴史としては記録されても、映画史やアニメ史としては記録されないであろう。私の立場から言えば、1日のblogのネタとしては十分であるが、1週間このネタで更新し続けることは出来ないというところ。
以上、面白くもないのに長いエントリをお読みいただき、ありがとうございました(w。