Annex of Theatrum Mundi

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感想・異邦人 カミュ著

後輩に文庫を借りたので、行き帰りに読んでみました。
主人公のムルソーは自分以外の考え方を想像できず、それが周囲と異なっていることも理解できない。従って周囲と調和できない人間である。そのことによって彼は自分自身を喪失する事態に陥ってしまう。しかし自分自身を喪失することによって、彼は新たに自分自身を獲得することが出来たのである。
周囲と調和できない人間は、共同体の内部にいながら外部の人間として扱われる。それこそがタイトルの由来であると思われる。この作品が書かれた時代は1930年代であり、時代背景として異邦人がクローズアップされていたことが想像される。私自身が今まさに主人公と同じ立場に置かれている、という思い込みによって私は自分自身を獲得した気になっている。異邦人としてあることで、私は私たり得ていると感じる。それが解消したとき、私は新たな舞台に立つのだろう。