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ネタバレ感想・サマーウォーズ

一子相伝伝統芸能アニメの総本家となったスタジオジブリを追い出された細田守監督最新作品です。紹介は公式ページ http://s-wars.jp/ を見て下さい。
内容に触れずに評価をすると、2時間つつがなく楽しめる作品です。今年の夏の映画では他にヱヴァ破しか観ていないのですが、それとは違うベクトルでお薦めできます。
以降はネタバレを含むので、未見の方はここまでで引き返して下さい。


ここから内容に入ります。
批判したい人向けに1行でまとめると、映像:きれいに観せたい所はきれい、脚本:ありきたり、声優:棒読み、総評:一般人向けお涙頂戴作品となります。
んで一応フォローすると、映像はマッドハウスなのでクオリティは高いです。CGの利用をかなり抑え気味にしていると思うので継ぎ目が見えるとかそういう不手際はありません。季節柄よく出てくる紫陽花などの描き込みは本当にきれいです。ただ作中の仮想世界「OZ」は背景を真っ白にしていて、情報量はすごいんだけどインパクトの薄い描写になっているのが気になります。脚本はありきたりとしましたが、ひねくれた方向けにひねたストーリーになっていないということなので、安心して観られる作品になっています。死亡フラグがわかりやすすぎたり王道のボーイ・ミーツ・ガールだったりしますが。声優は本家ジブリを倣ってかいわゆるアニメ声優ではない一般の俳優が多く、芝居がききすぎていたり逆にきかなすぎたりしています。それが作品全体としてはよい方向に向かっていると思うのですが、いかんせん個別のシーンの弱さに繋がっている気がしました。総評というかターゲットとしていると思われるのが「ショッピングモールに集う家族連れやカップル」だと思うので、穿った見方をする向きにはお薦めできません。ショッピングの合間に2時間泣いたり笑ったりしたいという欲求には誠実に応えてくれます。ひねて穿った見方としては「ジブリを追い出された恨みをジブリ映画的な手法で客を奪うことで晴らす」為に作ったのではないかという気がします。書いてて思い浮かんだのですが、ジブリも2作目が天空の城ラピュタで娯楽大作であったことから、その路線を踏襲しているのかもしれません。

最後に個別の展開について。
とりあえずツッコミどころがたくさんあります。OZが停止したときにも陣内家だけは電話(携帯を含む)テレビ電気水道が正常に動いている、衛星がすごい角度で大気圏に突入しているのに破損が少ない、その割に地表に激突したときの衝撃が小さい、OZは翻訳システムが優秀とか言っている割に世界中の人が日本語しゃべっている、そもそもライフラインシステムを統一プラットフォームに直結しているなどSF?というか科学的な部分は(物語の進行を妨げないために)相当いい加減でした。あとヒロインが初恋相手から主人公に乗り換えるまでが速いので口の悪いところではビッチ呼ばわりされていることは想像に難くないです。自分のかわいさを知っていてそれを有効に利用する姿勢が処女厨には許せないかも。上述したようにメインターゲットがオタクの方々ではなさそうなので些末な部分なのですが、些末な部分にしか目が行かない訓練されたオタクの私には気になったところでした。

以上文句ばかり書きましたが、作品の優劣で言えば明らかに優れた作品です。ド定番が必要なデートムービーにいかがでしょうか?