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化物語の感想・西尾維新、あるいはハーレムの王

アニメのBDの発売日が近づいて、初回版を購入するか否かを決定するために小説版を読みました。そこで思ったことを少し書きます。
西尾維新の作品でシリーズ物は刀語を除いてほぼ読んでいるのですが、JDCトリビュートを除くとほとんどがハーレム展開だな、ということに思い至りました。おそらくそのことが指摘されたのはわかりやすくハーレムエンドな「きみとぼくの壊れた世界」あたりからだったと記憶しているのですが、どう考えても登場人物(しかも主人公の味方)に女性が多い。天地無用!あたりから男のある種の理想郷としてのハーレム展開が増えていますが、西尾維新はかなり戦略的に導入している気がします。
また会話の面白さが西尾維新の魅力の一つとも言えますが、これは評価の点から観れば表裏一体です。ライトノベルに対する批判の1テンプレとして「会話ばかりで内容がない」というのがあるからです。しかし、この批判をすり抜けるための衒学趣味とそういう批判を避けられるジャンル(ミステリ)でデビューするという2つの戦術によってこの批判は無力化されていると考えられます。
以上2点をまとめた上で誤解を承知で言えば、「西尾維新はミステリにライトノベルの技法を導入することで人気作家となり得た」のではないかと思います。善くも悪くもセグメンテーションがされすぎた市場の中で、2つのジャンルの境界を慎重に歩む西尾維新はやはり才能があると言えます。この傍証としては、同じメフィスト賞受賞作家で似たような評価のされ方をした佐藤友哉舞城王太郎がいわゆる文芸誌にも作品を提供して「作家性」という(ハードカバーに象徴される)幻想を維持しているのに対し、西尾維新は一貫してノベルスなどのソフトカバーの本しか出していないことが挙げられるでしょう。
結論としては「ひたぎたんハァハァ」ということでよろしく(台無し)。