Annex of Theatrum Mundi

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感想・ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い

例によってネタバレありなのでご注意。
3年半以上にわたって続いたこのシリーズもついに終焉。すべてのキャラクターに平等にそれぞれの結末が訪れ、あるものは生き、そしてあるものは死んでいった。主人公に訪れた結末は彼自身が選択した未来であり、そして彼自身が忌避していたものそのものでもあった。しかし、人は時間を経るごとに変化していく、そのことを受け入れたからこそ、彼は彼の望んだ未来を掴み取ることが出来たのかもしれない。それは幸福でも不幸でもあるのだろう。
人間が創造し得るものは人間が想像可能なものだけであるということを、この作品を読むことで私ははっきりと自覚することが出来た。これまでの作品で、戯言遣いは普通であることを拒否し続け、また周囲を取り巻く人物も普通ではあり得なかった。最後を迎えるに当たって、彼自身も、また周囲も普通であることを受け入れることが出来たのは肯定的なメッセージとして受け取られるのだろう。しかし、そのことによって陳腐な結末を迎えたことも否定できない事実である。この作品においては、人間の成長という言葉が世界との妥協という意味でしか機能していない。同調圧力の高まり続けている現在、これ以外の結末は存在しない、いや存在することが出来ないのは理解できる。ただ、そのことによって作家の表現主体もオリジナリティも消え失せ、あとに残るのはどこかで見た筋書きをなぞるどこかで見たキャラクターの群れ。それこそがわれわれの望んだ未来なのだ。