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おおかみこどもの雨と雪 感想

よそ行き

孤児である花が愛を得て母となり子離れをする、という物語を私は女性が主体を確立するビルトゥングスロマンとして観ました。自分一人だけの生活から2人、3人、4人となったところで夫が退場して3人で生きていく決意をしてからコミュニティに受け入れられていく社会性の獲得としても観られるかな、と思います。花自身はあまりかわいい顔立ちではないのが女性に広く受け入れられるということに貢献したのかな、と感じました。全体として非常によくまとまっているのでこの夏に観る映画としては勧められる内容です。


さてここまでは政治的に正しい意見だけ書きましたが、この後はかなり腐しているので不快を覚える方もいらっしゃるかと思います。既に観賞された方で、とても気に入っているという方は読まない方が精神の健康によろしいでしょう。























物語上の難点

ここでは気になった点を指摘します。まあかなり細かい部分もあるのでキモオタが適当なこと言ってるな、と思ってください。

  1. 花がおおかみおとこに惚れたきっかけの描写が弱いので唐突にアタックしているように見える
  2. 雪もしくは雨が乳児の時の方が明らかに大変だったろうと思われるのにその描写が薄い
  3. 雨がおおかみとしての自分に目覚めるきっかけもあっさり解決しすぎている感
  4. 雨が失踪した後の「処理」が描かれていないのに雪の入学式での笑顔は違和感
  5. 全体として、おとぎ話としてはリアルすぎるしリアルな話としてはファンタジーすぎる演出

政治的に正しくない偏見

究極のところ、花という女性のエゴだけが物語をドライブしており、それが雨に覆されて初めて近代的な自我に目覚めるという物語の構造が私としてはとても気持ち悪かったです。コミュニティから排除されることで未熟なまま母親になるというのがかなり肯定的に描かれているのが気にくわないとも言えます。
さらに男性上位的な偏見を言えば、男が全員犬死にするのが残念です。同時期のダークナイトライジングが「男が死に場所を得るお話」であることと非常に対照的だと思いました。